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超重神山さんDESTINY

超重神山さんDESTINY

第3話 友との再会 後編

「えっ・・・ケーンの奴、ドラグナー持ち出してどっかにいっちまったんですか!?」

居住区で休んでいたキラ達はマリューからケーンが先ほどD-1を持ち出して何処かへと飛び去っていった事を告げられた。
どうりで姿が見えないと思えばそんな事になっているとは・・・・・・彼の無鉄砲さは昔から知っているが此処までするとは思わなかったのか全員(ケーンとあまり面識がないフレイ除く)同じタイミングでため息をつく。

「彼が何処に行ったか・・・心当たりはあるかしら?」

「心当たりなら・・・・・・まぁ、十中八九あそこだろうな」

タップの言葉にライト、キラ、トール、サイ、ミリアリアが「うん」と頷く。

「わかるのか?」

「この状況などから考えて・・・・・コロニーの入港管理局に行ったんだと思いますよ。」

「入港管理局だぁ?なんでまた・・・・」

フラガの疑問にミリアリアが答える。

「ケーンのお母さんが入港管理局で働いているんです。彼、お母さんと二人暮らしだから・・・」

「なるほど・・・心配で見に行ったってわけか。母親思いのいい子じゃないの」

「フラガ大尉・・・・今は軽口勘弁してください」

マリューのつっこみに「はい」と答えて黙るフラガ。
ダグラスもため息をつきながら横目でフラガを睨んでいる。どうも彼のこのつかみ所のない軽い性格はダグラスにとって馴染みにくい。

「艦長、そろそろ・・・」

「え・・ええ、そうね。実はあなた達にはもう一つ話があるのだけれど・・・」

「え・・なんですか?」

言い出しにくそうなマリューに変わりダグラスが一歩前に出て答える。

「単刀直入に言おう。先程、我が軍の機体を動かしていた君たちにパイロットをやってほしい」

「な・・オイオイ、冗談じゃねぇって!!」

「俺たちに戦争手伝えっての?」

「此処から脱出するためには戦力が足りないのだ。月本部に着くまでの間で構わない」

「お断りします、なんでそんな!!」

ダグラスと子供達のやりとりを見ていたフラガは「まぁ、当然の反応だわな」と小声で呟く。
戦争をやってくれと言われて喜んで手伝う奴など、まずいないのだ。ましてや民間人の子供なら当然である。
少し手助けしようかと口を開く。

「でもさ、お前らはさっきの戦闘でシグーを・・・敵の隊長機を退けたんだろ?結構見込みあると思うんだけどな」

「おだてても乗りませんよ」

「あ・・・・やっぱし?」

「アハハ」と乾いた笑いをこぼすフラガに全員の痛い視線が集まる。

「ともかく、此処から出るにはあなた達の協力がどうしても必要なの・・・」

「何度頼まれたって・・・・うわっ!!」

キラが断ろうとした直前、艦全体を強い衝撃と大きな揺れが襲う。

「な・・・なんだよ、オイ!?」

「どうした!?」

ダグラスが近くの艦内通信端末からブリッジへと通信をつなげる。
通信機からナタルの声が帰ってくる。

『敵襲です。ザフトが仕掛けてきました、敵はジン4機・・・拠点襲撃用の重爆撃装備が二機います!!』

「んだと!?クルーゼの野郎・・・コロニーごと俺達を潰すつもりかよ!!」

『艦長、すぐにブリッジへあがってください!!レナード少尉はすでに格納庫へ向かいました!!』

「わかったわ・・・レナード少尉のアークライン出撃後、アークエンジェル緊急離陸コロニーからの脱出を最優先します」

『了解しました』

通信を終え、マリューはもう一度キラたちの方を向く。

「聞いての通り、本艦は今から戦闘にはいります。さっきも行ったけれど今の戦力はあなた達抜きだと一機だけなの・・・お願い、協力して」

襲撃されている状況で協力をこうマリューに子供達は苛立ちを覚える。
このような状況下では心理的に断りにくいのは明らかだ。彼女もそれをわかっているのだろう・・・・大人の、軍人の卑怯な一面は彼らの神経を逆なでするには十分すぎる。

「卑怯だ・・あなた達は」

「卑怯でもなんでも好きに思え。今は戦争中なんだ」

「まともに戦争出来てない大人が言う台詞かね・・・・」

「なんだと!?」

ライトの皮肉たっぷりの言葉に激昂するダグラスをマリューが押さえる。
それを無視してキラ、タップ、ライトの3人は格納庫へと向かい歩き出す。

「あなた達・・」

「協力しなきゃいけないんでしょ・・・だったらやってやりますよ」



更衣室で白のパイロットスーツに着替えたクレアは格納庫のメンテナンスベットに固定されたアークラインのコクピットへと乗り込み、機体に火を入れ始める。
ハッチを閉じ機体のOSを起動させる。計器類、モニターを続けて作動させメインカメラに光がともる。

『レナード少尉、発進後すぐにアークエンジェルは離陸開始、コロニーから脱出する。それまでの時間稼ぎと艦の防衛を頼む』

ブリッジからのナタルの通信にクレアは小声で「気軽に言うわよ・・」と反論する。
自分一人で艦の防衛などをこなすなど無理難題もいいところだ。

「了解・・・やれるだけやりますよ」

格納庫の壁に立てかけられていたアークラインの武装、可変型プラズマランチャーを構えハッチへと機体を歩かせていく。
本来ならメンテナンスベットごとハッチまで移動させるのだが未だに格納庫がゴタゴタしている以上、そう言うわけにも行かない。
ハッチの出入り口まで歩き、空中を確認する。通常装備のジンが二機、爆撃装備のジンが二機こちらへと向かってきているの。

「豪勢な装備ねぇ・・・・ありがた迷惑もいいとこよ!!」

プラズマランチャーの折り畳まれていた銃身を展開しライフルモードへと変形させ上空のジンに向けトリガーを引く。
放たれたビームは距離がありすぎる事が災いしあっさりと回避されるが牽制目的なので当たらなくても良い。すぐにスラスターをふかし上空へと飛び出すアークライン。

「速攻で片づけさせてもらうわ!!」

上空へと向かいながらライフルを放つ。
4機のジンはそれを回避しながら降下し爆撃装備の二機がアークラインを無視してアークエンジェルへと向かい通常装備の二機がアークラインへと反撃する。

「チッ!!」

二機のジンから放たれたマシンガンの弾丸を回避。三連装機関砲で反撃しつつ距離を取り爆撃装備の二機へとライフルの銃口を向ける。

「悪いけど、射撃は得意なのよ」

先ほどの牽制目的の攻撃とは違い、本気で狙いトリガーを引く。
爆撃装備のジン一機の動きを予測して放たれた一撃はコクピットを正確に貫き機体を爆破四散させる。

「なんだと!?」

「あの距離で狙った!?」

ジンのパイロットはかなりの距離があるにも関わらずジンを正確に撃ち抜いたアークラインに驚きの声をあげる。
「白い狙撃手(スナイパー)」の二つ名で連合では名を知られているクレアだがザフトなど連合に敵対している軍にはまだ知られていない。
その事を知らないが故にザフト兵は驚きを隠せず動揺する。戦場での同様は即、死につながる。次の瞬間には爆撃装備のジンは二機とも撃墜されていた。
それにより我に帰ったジンのパイロットはアークラインへマシンガンを向け弾丸を連射する。

「よくもやってくれたなっ!!」

「仲間の仇だ!!」

連射される弾丸を回避しながらライフルを撃つ。
一機のジンの右腕をマシンガンごと撃ち抜き破壊する。もう一機のジンはマシンガンを重斬刀に持ち替えアークラインへと突撃を仕掛ける。
ミゲルの持ち帰ったデータでこの機体が接近戦を得意としていない事を思い出しての行動だ。

「接近戦でしとめる!!」

間合いをつめ重斬刀を振り下ろす。
アークラインは機体を下がらせそれを避け、ライフルの銃口を折り畳みマシンガンモードに変形させ、三連装機関砲と合わせて連射する。
実弾とビームの混合連射攻撃を至近距離から受けて無事なMSなどまず存在しない。ジンは瞬く間に蜂の巣へと代わり粉々に砕け散った。

「接近戦での対応ぐらい、ちゃんと用意してるって・・・浅知恵もいいとこよ」

マシンガンモードのプラズマランチャーをライフルモードへ変形させ残り一機のジンへと銃口を向ける。

「さっさと終わりにしましょうか」

片腕のジンをロックオンしトリガーを引く。
片腕を失いバランスの取れないジンにはほぼ回避不可能な攻撃。そのビームはジンの胸部を撃ち抜く・・・・・・事はなく、ジンの前に立ちはだかった一機のMSのシールドにより防がれた。

「なっ!?」

シールドでビームを防いだMSは右手に構えたビームライフルで反撃を仕掛ける。アークラインはそのビームを回避し大きく距離を取る。

「まだいたっての・・・あれって・・・」

ジンを守った敵の増援MSにクレアは見覚えがあった。
二つのアイカメラとV字のアンテナを持った深紅のMS、イージスガンダムだ。

「イージス・・強奪した機体をもう使ってくるなんて・・・ん?」

アークラインのレーダーに5機のMS反応が新たに捕らえられる。
一機はシグーだがもう4機はイージスと同じくよく知っている機体の物だ。
デュエルガンダム、バスターガンダム、ブリッツガンダム 敵に奪われた新型MS。ガンダムタイプが全て出てきたのだ。

「ガンダム全部投入って・・・・マジで冗談じゃないわよ・・・」



「敵は奪った4機のガンダムを全て投入してきたというのか!?」

アークエンジェルのブリッジでも、敵の増援は捕らえられていた。
最初、あっという間にジン3機を撃墜したアークラインを見て「これはいける!!」とクルーの誰もが希望を持った。
その直後の敵の増援・・・・・・しかも自分たちが開発し強奪された機体を全て投入してきた。性能面ではアークラインとほぼ互角のMSが4機に加え主に隊長機として運用されているシグーが一機。
ただでさえ開いていた戦力差がさらに開かれてしまった。

「いくらレナード少尉でもあれだけの敵を相手にするのは無理ね・・・イーゲルシュテルン起動、アークラインを援護しつつコロニーを脱出します!!」

「艦長、シグーはともかくガンダムはPS装甲を持っているのですよ!?実弾は・・・戦艦の物とはいえ機銃程度では通用しません!!」

「通用しなくても牽制にはなるわ、それにPS装甲だって無敵じゃないのよ」

「ですが・・・せめて、バリエントの使用を」

「コロニーの中で威力高い武装は使えないわ、下手をすればコロニーを崩壊させかねないもの。敵にはイーゲルシュテルンのみで対応して」

「・・・・了解しました」

マリューの甘すぎる判断に不満を覚えつつナタルは副官席に腰掛け戦闘指揮をくだす。

「イーゲルシュテルン全砲門起動、目標・・・敵MS、シグー及びガンダム!!」

ナタルの指揮を確認しつつマリューは艦長席に備え付けられた通信機で格納庫へと通信を取る。

「マードック軍曹、イーゲルシュテルンの発射直後にストライク、D-2、D-3にも出て貰います。準備は?」

『こっちはOKです。坊主達も乗り込みました』

「ストライクの装備は?」

『最初はソードにしようかと思ったんですが素人にいきなりアレは難しいでしょう。今回はエール装備で行かせます』

ストライクには汎用性に重点をおいたエール、近接戦闘を重視したソード、砲撃戦闘を重視したランチャーの3つの換装用装備、ストライカーパックが存在する。
今回のようなコロニー内部などでの戦闘では飛び道具を一切持たない近接戦闘装備であるソードが一番向いているのだがストライクに乗り込んでいるキラは軍人ではなく民間人。ジン2機と戦い1機を小破させたといっても素人には違いない。
素人にソードストライカーは癖が強すぎて扱いづらいだろうと言うマードックの判断でストライクには機動性に優れもっともバランスの良いエールストライカーが装備されることになったのだ。

「わかったわ。キラ君達にも伝えておきます」

マリューは格納庫との通信を一度切り3機の機動兵器へと通信をつなげた。



「基本操作はもうわかってるな?」

「はい、一度動かしましたし・・・・学校でも作業用なら動かしたことありましたから」

ストライクのコクピットでキラは整備員から操縦法の説明を受けていた。
タップ、ライトも同様である。もっとも、彼らの乗っているメタルアーマー、D兵器には最新型のサポートコンピュータが搭載されており基本動作は全てそのコンピュータがやってくれるのだが。
つまりキラが乗っているMS、ストライクガンダムよりは遙かに操縦は簡単なのだ。ちょっとその事が羨ましいような恨めしいようなとキラは内心で思っている。

「おい、聞いてるのか?」

「え・・ああ、はい」

「とりあえず、この機体ストライクのPS装甲は76発までなら実弾、実剣によるダメージをある程度軽減できる。もっとも衝撃までは殺せないがな・・・あと、一点への集中的な攻撃や艦の砲撃とかは実弾でも防げないから気をつけろよ」

「つまり・・・戦艦のミサイルとかレールガンは普通に効くって事か・・」

「ああ、それと一点への負荷・・・まぁ、ドリルだったりチェーンソーだったり・・あんな感じの武器にもめっぽう弱いからな」

整備員の出した武装にキラは「は?」と思わず間抜けな声をあげる。

「ドリルにチェーンソーって・・・そんな武器持ってる機体があるんですか?」

「例えだよ、例え。・・・PS装甲展開中は機体エネルギーが徐々に減っていくから気をつけろよ。ビームライフルやビームサーベルも機体から直接エネルギーひっぱてきてるから無駄に使うなよ」

「わかりました」

「んじゃ、頑張れよ」

整備員は伝えるべき事と戦場に出るキラに声援を送り機体から離れる。
声援を受けて良い気分にはならないが悪い気分はしない。少しは前向きに出れそうだと思っていた時、ブリッジから通信が入り、通信モニターにマリューの顔が映しだされる。

『3人とも聞いて、敵に増援が来たわ。』

「増援!?」

「聞いてないぜぇ!?」

『敵はこっちの都合や要望なんて聞いちゃくれないわ。最初にいたジン4機のうち3機はレナード少尉が撃破したけど増援の5機・・・シグーにザフトが此処から奪っていった新型MS、キラ君が乗ってるストライクの同系列機よ』

「同系列って・・・」

「まさか、ガンダムタイプだっての!?」

『ええ、デュエル、バスター、イージス、ブリッツ・・・どれもガンダムタイプ。用途などは違うけど基本性能はあなた達の機体と同等よ、気をつけて』

「気楽に言ってくれますね・・」

素人の自分たちの相手が性能が互角のMS4機。パイロットはザフト軍である以上、実戦経験に実力・・・・遙かに自分たちより上である事は間違いない。
そんなのを相手に「気をつけて」など、気休めにすらならない。

『イーゲルシュテルン発射直後に出撃してもらいます。それじゃ・・・頑張って』

そう言ってマリューは通信を切る。

「頑張れったて・・・・どう頑張ればいいんだよ」

タップが愚痴る。マリューにしてみれば出来る限りの声援を善意で送ってくれたつもりなのだろうが・・・頑張れと言われてもどうすればよいのか。

「やるしかない・・・か」



「イーゲルシュテルン、撃てぇーーーーーーーーっ!!!」

アークエンジェルの艦体に装備された機銃、イーゲルシュテルンが一斉に火を吹く。
すべての弾丸がザフト軍のMSへと向かって放たれる。いかに機銃と言えども戦艦に搭載されている物の威力はMSでは耐えきれるレベルではない。
機体を下がらせ弾丸から逃れる5機のMS。アークラインはそれを追いながらライフルモードのプラズマランチャーを連射する。
その間にアークエンジェルのハッチが開き其処からエールストライカーを装備したストライク、D-2、D-3が発進する。

「ストライクにドラグナー・・・あの子達か」

機体に誰が乗っているのか察したクレアは仕方ないとはいえ複雑な心境を覚える。
訓練も積んでいない素人の民間人を戦場に出すのはどうも気が引けてしまう。

『レナード少尉』

音声のみでナタルからの通信が入る。

『あの3人のフォローを頼む。フラガ大尉が出られない今は少尉だけが頼みだ』

「了解、言われずとも」

一度、機体を下がらせストライク達に合流する。

「三人とも、聞こえる?」

『はい、聞こえます』

『聞こえてますよ』

『こっちも同じく』

「私が前に出るからあなた達は艦からあまり離れすぎないで、とにかく自分と艦を守ることに集中して。それと・・D-3の子」

『俺っすか?』

「あなたはD-1の子を連れ帰ってきて。一人ほっておくわけに行かないでしょ?」

『了解、お任せあれ!!』

クレアの指示に笑顔で答えライトはD-3を最高速度まで加速させケーンとD-1がいるであろう入港管理局へと向かった。

「一機逃げるのか、逃がすかよ!!」

バスターに乗り込んでいるディアッカが両腰に構えた火線収束ライフルと350mmガンランチャーを自分たちに背を向けるD-3へと向けトリガーを引く。
その直前、アークラインのライフルから放たれたビームにより攻撃を阻止され体制を崩す。

「なぁにぃっ!?」

「あんた達の相手はこっちだってのよ」



へリオポリス入港管理局。
そのドックにD-1の姿があった。この入港管理局にケーンの母親、アオイ・ワカバがつとめているのだ。

「静かだ・・・・誰もいないのか?」

『周囲10キロ範囲内に生体反応ゼロです』

「シェルターに避難したのか?」

『此処は襲撃を受けた管理局と反対側のドックです。死傷者が出た確率は0%だと思われます』

ドック内を一通り見渡す。荷物などが散乱しているが不気味なほどに静かで人の気配が全くしない。
ただ虚しくD-1の駆動音が鳴り響く。

「ホントに・・・誰もいやしねぇ・・・・」

『これ以上は無意味かと思われますが・・・アークエンジェルへ戻りますか?』

「そうだな・・・すぐに戻るっていっちまったし・・・シェルターにいったんなら探しようもないし・・・戻るか」

ケーンはD-1のスラスターをふかし入港管理局を後にするため機体を反転させる。
と、丁度アークエンジェルのある方角から小さいながらも何かの閃光・・・・爆発のような物が見える。

「なんだありゃ?」

『機動兵器反応多数確認。戦闘かと思われます』

「え・・・マジ?」

『マジです』

「ヤッベェッ!!すぐに戻るぞ、全速力!!」

D-1のスラスターを全力でふかしケーンは全速力で閃光が見える場所、アークエンジェルが戦闘を行っている場所へと向かった。



アークエンジェル周辺では激しい戦闘が繰り広げられていた。
プラズマランチャーをライフルモードに変形させシグー他、ガンダム4機を狙う。

「その程度で!!」

デュエルを駆るイザークがアークラインのビームをビームコーティングが施されたシールドで防ぎ、ビームライフルを撃ちながら間合いを詰める。
そのビームを避けながらライフルをマシンガンモードへ切り替えつつ三連装機関砲を連射しデュエルを牽制する。

「ディアッカ!!」

「おうよ!!」

アークラインの背後に回り込んでいたバスターが火線収束ライフルと350mmガンランチャー、両肩のミサイルポットを一斉に放つ。

「くっ!!」

紙一重でそれを避けるが一気に間合いを詰めてきたデュエルがビームサーベルを振るって襲いかかる。

「貰っ・・たがぁっ!?」

ビームサーベルがアークラインの東部を捕らえる直前、デュエルに横殴りの衝撃が襲いかかり狙いがそれアークラインの左肩の装甲をわずかに溶かすだけに終わる。
デュエルの狙いをそらした機体、エールストライクはシールドを真っ正面に構えた状態でそのままデュエルに突っ込んでいた。相手の体制を崩すだけなら下手にライフルなどを使うよりは突っ込んだ方が良い。

「キ・・・キサマッ!!」

「このっ!!」

至近距離からストライクの頭部に装備されたイーゲルシュテルンを連射する。
デュエルの頭部を狙ったそれはデュエルの左のアイカメラを撃ち抜き破壊する。

「舐めるなよ、連合がぁ!!」

イザークはデュエルの足でストライクの腹部を蹴り飛ばし距離を取る。

「うわああっ!!」

「こいつぅっ!!」

タップがデュエルを狙いD-2の88mmレールガンのトリガーを引く。
しかし、ろくに照準も合わせないで適当に撃った弾丸が当たるはずも無く、弾丸はデュエルにかすりもせずあさっての方向へと飛んでゆく。
それを見たイザークは素人が乗り込んでいると確信する。とすれば時間をかけるまでもない、速攻で潰すまでだ。

「此奴ら、素人か・・・・・・よくもまぁ、その程度で戦場に出る!!」

ビームライフルをD-2に向けるがそれをアークラインに頭部を蹴り飛ばされ邪魔される。
デュエルが体制を崩したのを確認するとクレアは通信回線を開きキラとタップへ通信を入れる。

「二人とも前に出ないで!!助けてくれたのはありがたいけど足手まといよ!!」

『あ・・すいません!』

「デュエルとバスター・・・あと、シグーは私が押さえるから、イージスとブリッツをお願い。機体は壊してもいいけど死んじゃ駄目よ!!」

(最高機密なのに壊していいんだ・・・)とキラとタップがクレアの指示に少々呆然とする。軍人としては今、自分たちが乗っている機体は何が何でも守るべき物であるはずなのだが・・・・・・。
そう思っている間にアークラインはデュエルとバスター相手にライフルを撃ちながらシグーへ三連装機関砲による牽制を行っている。
その腕に驚きを覚えつつ自分たちが任されたイージス、ブリッツへと意識を集中させる。

「任されたからにゃとことんやってやりますか、行くぜキラ!!」

「ああ!!」

ビームライフル、88mmハンドレールガンを構え連射する。それに加えてアークエンジェルもイーゲルシュテルンをシグーやガンダムに向け連射している。
イージスとブリッツはそれをシールドで防ぎながら徐々に後退し距離を取る。

「いかにも素人といった風な戦い方ですが・・・・・・この弾幕を突破するのは少し骨ですね・・」

ブリッツのコクピットでニコルが呟く。
一方、アスランはイージスのコクピットで思考していた。この弾幕を突破する方法ではない、目の前にいる白いガンダム、ストライクのパイロットについて。

(あれに乗っているのは・・・キラなのか?)

工場で見かけたあの民間人、キラに思えるが・・・あの大人しい彼が、なにより自分と同じコーディネイターであるキラ・ヤマトが連合軍のMSに乗り込み自分たちと戦うはずがない。
アスランにはそう思えるぐらいの確信がある。しかし、もし本当に乗っているのがキラなら? という疑念も浮かぶ。

「くっ・・・ニコル!!」

思考の末、アスランはニコルへと通信を開く。

『なんですか?』

「俺はあの白いガンダムタイプを押さえる。援護してくれ!!」

『えっ!?ちょっとアス・・・』

一方的に通信回線を閉じ、シールドを構えビームライフルを腰にマウントさせ腕分に内蔵されているビームサーベルを展開させストライクへと突撃する。

「なっ!?あの赤いガンダム、突っ込んでくるのか!?」

キラはビームライフルを腰の後ろへとマウントし、エールストライカーに装備されているビームサーベルへと武器を持ち替えイージスを迎え撃つ。
イージスとストライクのビームサーベルがぶつかり合い火花を散らす。
アスランはあいている左手の指関節からワイヤーを伸ばしストライクへ接触通信を試みる。

「そのガンダムのパイロット。お前は・・お前はキラ・ヤマトなのか!?」

接触通信で聞こえてくる赤いガンダムのパイロットの声にキラは聞き覚えがあった。
忘れるはずもない3年前、月の幼年学校で一緒だった親友の声。

「アスラン・・・アスラン・ザラ!?」

「やはりキラ・・・お前だったのか」

通信回線の向こうから聞こえてくる声はやはり聞き慣れた友人の声。
その事実にアスランは虚しさと憤りを覚える。久々の再会がこのような戦場でなどと誰が考えたか。

「アスラン!!なんで君がそんなMSに!?」

「それはこっちの台詞だ!!キラ、何故・・・お前が連合軍のMSに乗って戦闘を!!」

ビームサーベルをお互いに弾き一度距離を取るストライクとイージス。
そのまま上昇し戦闘が行われていない高度に到達するとお互いに正面から睨み合う。

「地球軍に入隊したとでも言うのか、キラ!!」

「何を馬鹿な事・・・僕は地球軍じゃない!!」

「ならば何故、そんな物に乗っている!?」

「アスランこそ、なんでザフトに・・・・戦争なんか嫌だって君だって言ってたじゃないか!!」



「ん?アスラン、何をやっている!!」

アークエンジェルの機銃を回避し続けていたクルーゼは上空でストライクと睨み合ったまま動かないイージスに気がつき上昇する。

「しまった!?ストライク、何をやってるの!!」

クレアは通信回線を開き、キラに連絡を取ろうとするがまったく返事がない。
いや、雑音が酷く聞き取りにくいが言い争いのような声が聞こえてくる。

『・・・・軍に・・・・のか、・・・・』

『何を・・・・・僕・・・・・じゃ・・・・』

『・・・何故・・・・・・乗っている!?』

『アス・・・・ザフ・・・・・・・・嫌・・・・・君・・・・じゃな・・・・』

「言い争い?にしては・・・・お互いの事を知ってるように聞こえるけど・・・・って!!」

通信の方に集中している隙にデュエルとバスターがライフルを放ちアークラインを狙ってくる。
装甲をビームがかすめ溶かしていく。

「やってくれるわね・・・このぉっ!!」

ライフルモードのプラズマランチャーで反撃を仕掛けながら距離を詰め腰の後ろからコールドメタルナイフを抜き構える。

「「くっ!!」」

イザークとディアッカは反撃のビームを回避するが、一気に間合いを詰めてきたアークラインへの対処が間に合わずデュエルは頭部へ加速のついた蹴りを貰う。

「ぐっがぁっ!!」

「イザーク!?っ!!」

そして、バスターはアークラインのコールドメタルナイフを右肩の関節部分に突き立てられる。
いくら実弾をある程度無効化出来るPS装甲を持つ新型と言えども関節部分などは通常のMSと変わらないのだ。其処を狙えば当然、実剣でもダメージを与えられる。

「うぐっ!!」

「これはオマケよ!!」

アークラインの左腕をバスターの腹部へと押しつけ三連装機関砲を銃口を開く。

「遠慮無く、持っていきなさい!!」

左腕に収納されている三連装機関砲が一斉に火を吹く。
バスターの腹部に浴びせられる無数の弾丸。PS装甲のおかげでダメージは無いが衝撃は殺せず、そのまま機体、パイロットへと伝わる。

「うおああああっ!!!」

その衝撃と振動をまともに受け吹き飛ばされるバスター。
コクピットのディアッカはその衝撃による激しいシェイクにより胃からこみ上げてくる液体を押さえる事が出来ずヘルメットの中にぶちまけた。
さらに至近距離からの全弾直撃であり装甲は無事とは言え摩耗し内部のメカーーー主に駆動系関連の配線ーーーが衝撃で壊れバスターは行動不可能に陥った。
2機の一応の沈黙を確認しクレアはアークラインを上昇させ、シグーを追った。



デュエルとバスターの沈黙。それはアークエンジェルブリッジからも確認できた。
これで敵の陣形に決定的と言っても良い穴が開いたのだ。

「艦長!!」

「ええ、機関最大!!アークエンジェルは全速力でヘリオポリスから脱出します!!」

「了解!!」

アークエンジェルのエンジンが最大出力となり一気に速度をあげていく。
そのままコロニー入港管理局のドッグから外へ飛び出すつもりなのだ。

「出撃している遊軍機に撤退を指示して。イーゲルシュテルンで敵機を牽制し味方の退避を援護します」

「D-1とD-3は!?」

「レーダーに反応。D-1および3です!」



ストライクとイージス。未だにらみ合いを続ける二機の間にクルーゼの駆るシグーが割って入り込みストライクへと重斬刀を振り下ろす。

「くっ!!」

それをシールドで受け止めイーゲルシュテルンで反撃。
シグーはそれを避けシールドのガトリングを連射、ストライクのシールドを削っていく。

「隊長!!」

「アスラン、何を敵と惚けているのだ!!」

アスランを叱咤しクルーゼは重斬刀を投げ捨てマシンガンとガトリングを同時連射でストライクを攻撃する。

「くうっ!!」

シールドで防御するがいつまで持つかはわからない。横目でエネルギー残量を確認すると・・・すでにイエローゾーンを切りレッドゾーンへはいろうとしていた。
このままではやられる。

「何か・・・打つ手は!!」

「此処で消えてもらえるとありがたいのだがな、ガンダム!!」

シグーのマシンガンとガトリングが再び一斉に放たれようとした時、マシンガンは真下からの、ガトリングは真上からの一撃により撃ち抜かれ両腕ごと吹き飛んだ。

「!?」

見ると真下にはライフルモードのプラズマランチャーを構えたアークラインが真上にはハンドレールガンを構えたD-1とD-3がこちらを狙っていた。
キラはその隙にビームライフルに武器を持ち替えシグーを狙う。

「隊長!!」

それをイージスのシールドが防ぐ。
ストライクはその間に二機のドラグナーとアークラインと共にアークエンジェルへと向かっていった。

(キラ・・・・)

アスランはその様子を、黙ってみている以外に現状でやれる事はなかった。



「タップ、ずらかるぞ!!」

ブリッツ相手にそれなりの奮戦を行っていたD-2へライトが通信をいれる。

『おうよ!!』

D-2のハンドレールガンでブリッツを牽制しながらアークエンジェルへと撤退する。
全機がアークエンジェルに着艦した事を確認したマリューは続けざまに指示を出す。

「外に出ると同時にローエングリン照準。待機している筈のザフト艦へ牽制射撃を行います」

アークエンジェル、カタパルトハッチの真下に装備されている最強の武装。
陽電子砲ローエングリンがその砲身を現し起動する。

「アークライン、ストライク、ドラグナー全機収容しました!!」

「へリオポリス脱出まで後3分!!」

ローエングリンのエネルギーがチャージされていく。
そして、アークエンジェルはその白き船体を闇の宇宙空間へと飛び出させる。
脱出後ザフト艦を確認するまで2分とかからなかった。

「ローエングリン照準!!撃てぇーーーーーっ!!」

左舷の陽電子砲が無慈悲な光を解き放つ。

「回避ーーーっ!!」

ヴェザリウスのアデス。ガモフのゼルマンはアークエンジェルの存在を認めると同時に回避運動を指示していた。
陽電子砲のチャージを開始していた相手なのだ。真っ向からぶつかれば直撃し轟沈は免れない。
回避はなんとか間に合ったが共に艦底部に陽電子砲が損傷を与え爆発を起こす。

「ぐっ!!」

轟沈する程では無いにしろ、相当なダメージを貰ってしまった。
その二隻のザフト艦の間をすり抜けるように最高速度へ加速したアークエンジェルは戦線を突破。一気にヘリオポリス中域を脱出したのだった。


続く


《次回予告》
ザフト軍、クルーゼ隊の襲撃を振り切ったアークエンジェルは一路、フロンティアサイドへと航路を向ける。
しかし・・・彼らを狙うのはザフトだけでは無かった。
フロンティアサイドへの航路の最中、アークエンジェルの前にギガノス軍巡洋艦フンボルト。
そして・・・・ギガノス軍、最強の男が立ちはだかる

次回 スーパーロボット大戦エヴォリューション

第4話 『ギガノスの青き鷹』
その実力、見せつけろ ファルゲン!!



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